
古い家を売ったあとに、
雨漏りやシロアリの責任を問われるのか
問われることはあります。決めるのは「知らなかったか」ではなく、 契約書と告知書に何を書いたかです。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
「売ったあとに何か言われたら」で、
最後に足が止まります。
相続した実家は築五十年。雨漏りがあったと聞いたことはあるが、直したのかどうかは知らない。 床下は見たことがない。売ったあとで「雨漏りしている」「シロアリがいた」と言われたら、 こちらが直すのか、お金を返すのか——。ここで止まる方が、実際に多くいらっしゃいます。
答えは「知らなかったから大丈夫」でも「業者に売れば全部免責」でもありません。 2020年4月1日に施行された民法の改正で、売主の責任を決める物差しは「隠れた瑕疵があったか」から「契約の内容に適合しているか」に変わりました。 つまり、契約書と告知書に何を書いたかで決まります。そして免責の特約は法律上できますが、知りながら告げなかった事実には効きません(民法第572条)。
このページでは、知っておきたいことを七つに整理します。条文は2026年9月20日にe-Gov法令検索で本文を取得して突き合わせ、 運用は国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」と 「人の死の告知に関するガイドライン」を同日に本文で確認しました。 先に一つ申し上げておきます。当社は、裁判例を引用していません。裁判所のサイトで原文を確認できたものが無かったからです。 書いているのは、条文の言葉と、国土交通省の資料の言葉だけです。
免責の一語より先に、
何が「不適合」になるのかの話をします。
いずれもe-Gov法令検索の条文本文と、国土交通省の公開資料で確認した内容です。 個別の契約条項の有効性や、ある不具合が不適合に当たるかどうかを判定するもの ではありません。判断は、弁護士・司法書士へご確認ください。ここでは、どの条文に もとづいて、何が、どういう順番で決まるのかまでをお伝えします。
「瑕疵担保責任」は2020年4月1日に「契約不適合責任」に変わりました。物差しが「隠れた瑕疵」から「契約の内容」に移ったのが、いちばん大きな変化です
2020年3月31日までの民法第570条は「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する」と定め、買主がその瑕疵を知らず、かつそのために契約をした目的を達することができないときは解除、そうでないときは損害賠償の請求のみができる、という仕組みでした。2020年4月1日に施行された改正民法は、この考え方を入れ替えました。今の第562条第1項は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、買主は売主に対し、目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる、と定めます。追完がされなければ、不適合の程度に応じた代金の減額(第563条)。それとは別に、第415条の損害賠償と、第541条・第542条の解除もできます(第564条)。移転した権利が契約の内容に適合しない場合——たとえば約束に無い第三者の権利が付いていた場合——にも同じ規定が準用されます(第565条)。ここで大事なのは、物差しが「隠れた瑕疵があったか」から「契約の内容に適合しているか」に変わったことです。雨漏りがあることを契約書と告知書に書いて、それを前提に値段を決めたのなら、その雨漏りは「契約の内容」そのものであって、不適合ではありません。逆に、何も書かずに売れば、買主が「そんな話は聞いていない」と言える余地が生まれます。もう一つ。損害賠償については、第415条第1項ただし書により、不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、売主は責任を負いません。追完・代金減額・解除にはこの但し書きがなく、売主に落ち度がなくても請求され得ます。なお、この改正には経過措置があり、2020年3月31日以前に締結された売買契約については、なお従前の例(旧法の瑕疵担保責任)によります(改正法附則第34条第1項)。「新築住宅なら10年保証」という話も耳にしますが、住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条の10年は、建設工事完了から1年以内でまだ人が住んだことのない「新築住宅」(同法第2条第2項)の売買だけの規定で、中古の家には及びません。
当社が買主になる契約では、契約不適合責任の条項——負うのか負わないのか、負うなら何について何年か——を、査定額と同じ書面に条項の言葉で書いてお示しします。口頭で「大丈夫です」と済ませることはしません。契約書のどの条項がどう働くかは、契約の前にご説明します。
根拠:民法第415条第1項、第541条、第542条、第562条〜第565条/改正前民法第566条・第570条(2020年3月31日時点の条文)/民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第34条第1項/住宅の品質確保の促進等に関する法律第2条第2項、第95条
期限は「知った時から1年以内に通知」。ただしこの1年は、種類と品質の不適合だけの話です。面積と権利には、1年の壁がありません
民法第566条は、売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は追完の請求・代金の減額の請求・損害賠償の請求・契約の解除ができない、と定めています。改正前の第566条第3項は「事実を知った時から一年以内に(解除または損害賠償の請求を)しなければならない」でしたから、権利の行使そのものが1年以内に必要でした。今は「その旨を通知」すれば足ります。通知で権利が保たれたあとは、一般の消滅時効——債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年(第166条第1項)——が走ります。ここから、よくある誤解が三つ解けます。第一に、1年は「引渡しから」ではなく「買主が不適合を知った時から」です。引渡しから1年たてば安心、という話ではありません。第二に、第566条が対象にしているのは「種類又は品質」の不適合だけです。数量の不適合——登記簿の面積と実測が違っていた、という話——と、第565条の権利の不適合には、この1年の制限がありません。残るのは第166条の時効だけです。古い土地では登記簿の面積と実測が一致しないことが珍しくありませんから(境界と越境の記事)、公簿の面積で売買し面積の差による代金の精算をしない、とするのか、実測して精算するのかは、契約書で決めておく必要があります。第三に、第566条のただし書は、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、1年の制限を適用しない、と定めています。知っていて黙っていた売主は、1年の壁で守られません。
当社が買主になる場合、この1年の壁を使うのは当社の側です。売主の方には、引渡し後にいつまで何の責任が残るのか——免責なら残らないこと、残すなら何について何年か——を、契約書の条項番号つきでご説明します。面積については、査定の段階で公簿と実測のどちらで決めるかを先に決め、契約書に書きます。
根拠:民法第166条第1項、第565条、第566条/改正前民法第566条第3項・第570条(2020年3月31日時点の条文)
「担保責任を負わない」という特約は有効です。ただし、知りながら告げなかった事実には効きません(民法572条)。だから免責の条件は、告知書です
民法第572条は、売主は第562条第1項本文または第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、「知りながら告げなかった事実」および「自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利」については、その責任を免れることができない、と定めています。読み方は二段です。前段——担保責任を負わない特約は、法律上できる。後段——その特約があっても、知っていて黙っていた事実については責任が残る。つまり「免責=何も言わなくてよい」ではなく、「知っていることを全部告げることが、免責を確実にする条件」です。ここで役に立つのが、告知書(物件状況等報告書)です。国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、宅地または建物の過去の履歴や性状など取引物件の売主や所有者しか分からない事項について、売主等から協力を得られるときに告知書を提出してもらい買主等に渡すことを、将来の紛争の防止に役立つとして「積極的に行うことが望ましい」と書いています。記載事項の例として挙げられているのは、土地関係では境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の存否または可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去および現在の利用状況。建物関係では新築時の設計図書等、増改築および修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の傾き・腐食等の存否または可能性の有無、過去の所有者と利用状況。その他として、特定保守製品の有無、従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等です。売主等が知り得る範囲で記載し、売主等の責任の下に作成されたものであることを明らかにする、とされています。告知書に書いた事実は、契約の内容になります(第562条の物差しでは、書いてあることは不適合になりません)。書かずに知っていた事実は、免責特約があっても第572条で責任が残ります。二重の意味で、告知が売主を守ります。なお、免責特約は担保責任の話であって、事実と違うことを告げて契約させた場合の詐欺による取消し(第96条)や、契約の基礎とした事情の認識が真実に反していた場合の錯誤による取消し(第95条)は、別の条文で動きます。
当社の査定では、最初に「物件の状況の聞き取り」を行います。雨漏り・シロアリ・傾き・給排水の不具合・増改築の履歴・境界と越境・地中の埋設物・近隣とのもめごと・過去に人が亡くなったことの有無を、告知書と同じ項目で伺い、書面に残します。「知らない」ことは「知らない」と書きます。知らない事実は第572条の例外に当たりませんから、免責の対象です。この書き出しを売主の方と一緒に行うことが、免責を確実にする唯一の方法だと当社は考えています。
根拠:民法第95条、第96条、第562条第1項、第572条/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)「4 不動産の売主等による告知書の提出について」
免責にできる範囲は、「誰が売主で、誰が買主か」で三通りに分かれます。個人が業者に売る買取では、法律は売主の免責を制限していません
同じ民法第572条の下でも、上乗せの規制が、取引の型によって違います。第一の型、売主が宅地建物取引業者で買主が業者でない場合。宅地建物取引業法第40条第1項は、業者が自ら売主となる売買契約では、目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の責任について、民法第566条の期間を引渡しの日から2年以上とする特約をする場合を除き、同条より買主に不利となる特約をしてはならない、と定め、反する特約は無効です(第2項)。買主が消費者なら消費者契約法も重なります。事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効(第8条第1項第1号)。ただし、事業者が追完または代金減額の責任を負うと定めている場合には、損害賠償の免除条項にこの規定は適用されません(同条第2項第1号)。第二の型、売主も買主も個人で、仲介業者が間に入る場合。適用されるのは民法第572条だけです。第40条は「自ら売主となる」業者の条文ですから、仲介業者が関わっても売主が個人なら及びません。消費者契約法は消費者と事業者との間で締結される契約(第2条第3項)が対象で、個人同士の売買には適用がありません。契約書でよく見る「引渡しから3か月」といった期間は、法律の定めではなく契約の定めです。第三の型、売主が個人で買主が宅地建物取引業者——当社のような買取業者に売る場合。第40条は売主が業者のときの条文なので、適用がありません。消費者契約法第8条が無効にするのは「事業者の」損害賠償責任を免除する条項です(第1項各号)。売主である消費者の責任を免除する条項は、その対象ではありません。第10条も、消費者の権利を制限しまたは義務を加重する条項を対象にしており、消費者の責任を軽くする特約はこれに当たりません。したがって、免責の範囲は民法第572条の枠内で契約で自由に決められます。「業者に売れば免責にできる」と言われるのは、この理由です。第四の型として、業者同士の取引では第33条の2および第37条の2から第43条までの規定が適用されません(第78条第2項)。どの型でも変わらないのが、第572条の「知りながら告げなかった事実」です。誰が買主でも、これは消えません。もう一つ、契約不適合責任について定めがあるときは、その内容が契約書面の記載事項です(宅地建物取引業法第37条第1項第11号)。免責にするなら、契約書にその旨が書かれます。
当社が買主になる場合は第三の型です。当社は、契約不適合責任を免責にする範囲——構造、雨漏り、シロアリ、給排水設備、地中の埋設物、残置物、越境——を、契約書の条項の言葉で書きます。「現況有姿」という一語だけで済ませません。その一語では、何を免責したのかが契約書から読めないからです。免責の条項と査定額は同じ書面に載せます。免責の範囲が広いほど当社の引き受ける危険が増え、それは値段に反映されるからです。
根拠:民法第572条/宅地建物取引業法第37条第1項第11号、第40条、第78条第2項/消費者契約法第2条第1項〜第3項、第8条第1項・第2項、第10条
再建築不可であること自体は「不適合」ではありません。契約の内容に入っているからです。入っていなければ——「建て替えられる」と言って売れば——別の話になります
「契約の内容に適合しない」かどうかは、契約で何を約束したかで決まります。再建築不可——建築基準法第43条の接道の制限——は、宅地建物取引業者が売主または媒介として関わる売買では、重要事項説明の対象です。宅地建物取引業法第35条第1項第2号は、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものの概要を、宅地建物取引士が書面を交付して説明しなければならないと定め、同法施行令第3条第1項第2号がその法令の一つとして建築基準法第43条・第43条の2を挙げています。私道の負担は第35条第1項第3号、登記された権利——抵当権・地役権など——は同項第1号です。これらの説明を受け、重要事項説明書と契約書に記載されて契約した以上、「建て替えられない」ことは契約の内容そのものであって、不適合ではありません。逆に、「建て替えられます」と説明して売った家が再建築不可だったなら、品質の不適合であるだけでなく、宅地建物取引業者であれば第47条第1号(重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為の禁止)の問題になり、買主の側からは錯誤による取消し(民法第95条第1項第2号・第2項)が問題になり得ます。同じ理屈は、木造密集地域の古い家に付きものの傾き・雨漏り・シロアリ・越境・地中の埋設物・残置物にも当てはまります。契約書と告知書にどう書いたかで、不適合かどうかが決まります。建物の価値をゼロとして「古家付き土地」として売り、建物について契約不適合責任を負わないと定めるのも、契約の内容の決め方の一つです。建物の状態を第三者に見てもらう仕組みもあります。既存住宅の売買では、媒介契約書に建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項が記載され(第34条の2第1項第4号)、重要事項説明で調査の実施の有無と結果の概要が説明され(第35条第1項第6号の2イ。実施後1年以内、鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年以内のもの=施行規則第16条の2の2)、契約書面には建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項が記載されます(第37条第1項第2号の2)。調査するのは建築士で国土交通大臣が定める講習を修了した者(施行規則第15条の8)、見るのは基礎・柱・壁・小屋組などの構造耐力上主要な部分と、屋根・外壁・開口部の建具・排水管のうち雨水の浸入を防止する部分です(同第15条の7)。解釈・運用の考え方は、当事者の双方が写真や告知書等をもとに既存住宅の状況を客観的に確認し、その内容を価格交渉や担保責任の免除に反映した場合等には、それを「当事者の双方が確認した事項」として契約書面に記載して差し支えない、としています。確認したことを書く。書いたことは契約の内容になる。これが、売ったあとの争いを減らす順番です。
当社の査定は、再建築不可であること、建物の傷み、越境、埋設物の可能性を前提に価格を出します。その前提を契約書と告知書に書き、契約の内容にします。書いてあることは不適合になりません。査定の過程で撮った写真と、当社が確認した建物の状態は、契約書面の「当事者の双方が確認した事項」に反映できる形でお渡しします。
根拠:民法第95条、第562条第1項/宅地建物取引業法第34条の2第1項第4号、第35条第1項第1号〜第3号・第6号の2、第37条第1項第2号の2、第47条第1号/宅地建物取引業法施行令第3条第1項第2号/宅地建物取引業法施行規則第15条の7、第15条の8、第16条の2の2/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第37条第1項第2号の2関係
過去に人が亡くなった家。国土交通省のガイドラインは「売買には、年数の目安を置いていない」と読むのが正確です
令和3年10月8日、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。宅地建物取引業法第47条第1号——取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない行為の禁止——の解釈として、居住用不動産を対象に、業者が告げなくてもよい場合を三つ整理したものです。①賃貸借・売買とも、取引の対象不動産で発生した自然死と、日常生活の中での不慮の死(自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など)は、原則として告げなくてもよい。ガイドラインは、自宅における死亡のうち老衰や病死が9割を占めるという統計を根拠に挙げています。ただし、長期間人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は別です。②賃貸借については、①以外の死が発生した場合と、特殊清掃等が行われた①の死について、発覚から概ね3年間を経過した後は原則として借主に告げなくてもよい(事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い事案を除く)。③賃貸借・売買とも、対象不動産の隣接住戸や、日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分での事案は、原則として告げなくてもよい。ここで読み落とされがちなのが、②が「賃貸借」だけだということです。売買については、①と③以外に「何年たてば告げなくてよい」という目安は置かれていません。「売買でも3年たてば告知不要」と書いている記事を見かけますが、ガイドラインはそう書いていません。さらに、期間や死因にかかわらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから把握しておくべき特段の事情があると認識した場合には、告げる必要があります。告げる内容は事案の発生時期・場所・死因と特殊清掃等が行われた場合はその旨で、亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成、具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はありません。売主の側から見ると、二つのことが書かれています。一つは、媒介業者は売主に対し告知書等に過去の事案の記載を求めることで調査義務を果たしたものとされること。もう一つは、業者は売主に対し、事案の存在について故意に告知しなかった場合等には民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましい、とされていることです。ガイドライン自身が、これは業者の宅地建物取引業法上の義務の解釈であって、民事上の責任は契約の内容等によって個別に判断される、と明記しています。売主にとっては、民法第572条の「知りながら告げなかった事実」に当たり得る、という整理になります。
当社は買主として、過去に人が亡くなったことの有無を、査定の聞き取りの項目に入れています。あったからといって買い取れないわけではありません。契約書と告知書に何を書くかを確定させるための項目です。伺った内容は、亡くなった方の名誉とご遺族の生活の平穏に配慮し、ガイドラインが告げる必要はないとしている氏名等の事項は、当社の資料にも残しません。
根拠:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月8日)/宅地建物取引業法第47条第1号/民法第572条
再建築不可の家では、免責の条項が値段の一部です。契約から引渡しまでの間に壊れたときの決まりも、同じ紙に書きます
売れない理由の記事に書いたとおり、再建築不可の物件は住宅ローンの多くが融資対象外で、買主は現金で買う個人か、当社のような買取業者が中心です。買主が個人なら、04の第二の型——民法第572条だけの世界——で、免責特約は結べます。ただ、買主が住むために買う個人である場合、引渡し後に雨漏りが見つかったときに「知っていたはずだ」という争いになりやすい、というのが当社の見方です。買主が業者なら第三の型で、免責の範囲を契約で決められ、業者は建物の状態を自分の目で確かめ、その状態を前提に値段を付けます。値段に織り込んだものは、引渡し後に問い返さない。それを契約書の免責条項に書く——免責の条項が値段の一部だ、というのはそういう意味です。もう一つ、契約と引渡しの間の話があります。売買契約を結んでから引渡しまでの間に、地震や火災で建物が壊れたらどうなるか。引渡しの後であれば、民法第567条第1項により、当事者双方の責めに帰することができない事由による滅失・損傷について買主は追完・減額・損害賠償・解除を請求できず、代金の支払も拒めません。引渡しの前であれば、第536条第1項により、双方の責めに帰することができない事由で債務を履行できなくなったとき、買主は代金の支払を拒むことができます。この「天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め」は、定めがあれば契約書面の記載事項です(宅地建物取引業法第37条第1項第10号)。古い木造の家では、この条項の書き方——引渡しまでは売主の負担とし、滅失したときは契約を解除できる、修補して引き渡す、など——を、契約の前に確かめておく必要があります。最後に、売ったあとの安心は、免責の一語ではなく、①知っていることを全部書いた告知書②免責の範囲を条項の言葉で書いた契約書③引渡しまでの危険負担の定め、の三つが揃って初めて成り立ちます。第572条の例外は誰が買主でも消えません。だから当社は、告知書を一緒に作るところから始めます。
当社の見積は、①金額②契約不適合責任の扱い(免責の範囲と期間)③引渡しの状態(残置物を残してよいか、解体の要否)④契約から引渡しまでの危険負担の定め、の四つを一枚に並べてお出しします。金額だけを先に伝えて、条件をあとから足すことはしません。結果として当社にお売りにならなくても、この四つの整理は、他の買主と話すときにそのままお使いいただけます。
根拠:民法第536条第1項、第562条、第567条第1項、第572条/宅地建物取引業法第37条第1項第10号・第11号
同じ572条の下で、
上乗せの規制が取引の型で変わります。
以下は、条文と国土交通省の公開資料に載っている決まりだけを2026年9月20日に 確認して並べたものです。当社が推計した数字、争いになったときの費用や期間の目安、 裁判例は含めていません。
売主が宅地建物取引業者、買主が業者でない個人
新築や、業者が再販する中古を買うとき。民法の上に宅地建物取引業法と消費者契約法が重なる
宅地建物取引業法第40条/消費者契約法第8条/民法第566条・第572条
業者売主は、民法第566条の期間を引渡しから2年以上とする特約を除き、同条より買主に不利な特約をしてはならず、反する特約は無効です(第40条)。買主が消費者なら、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効(消費者契約法第8条第1項第1号)。ただし追完または代金減額の責任を負うと定めている場合、損害賠償の免除条項には同項が適用されません(第2項第1号)。
補足:新築住宅なら、構造耐力上主要な部分等について引渡しから10年の責任が上乗せされ、買主に不利な特約は無効です(住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条)。中古には及びません。
売主が個人、買主が個人(仲介で個人に売る)
いちばん多い型。適用されるのは民法だけ
民法第562条〜第566条、第572条
宅地建物取引業法第40条は「自ら売主となる」業者の条文で、媒介業者が間に入っても売主が個人なら及びません。消費者契約法は消費者と事業者の間の契約が対象で(第2条第3項)、個人同士には適用されません。免責特約は第572条の枠内で自由に結べますが、知りながら告げなかった事実については責任が残ります。
補足:契約書の「引渡しから3か月」などの期間は法律の定めではなく契約の定めです。定めが無ければ、第566条(知った時から1年以内の通知)と第166条(5年・10年の時効)がそのまま働きます。
売主が個人、買主が宅地建物取引業者(買取)
当社に売っていただく型。法律は売主の免責を制限していない
民法第572条/宅地建物取引業法第40条(売主が業者のときの条文=適用なし)/消費者契約法第8条(事業者の責任の免除が対象=適用なし)
第40条は売主が業者のときの条文で、買主が業者のときには働きません。消費者契約法第8条が無効にするのは事業者の損害賠償責任を免除する条項で、消費者である売主の責任を免除する条項は対象外です。第10条も消費者の権利を制限し義務を加重する条項の話で、売主の責任を軽くする特約はこれに当たりません。免責の範囲は第572条の枠内で契約で決められます。
補足:「知りながら告げなかった事実」の例外は、この型でも消えません。免責の条項の内容は、定めがあるときは契約書面の記載事項です(宅地建物取引業法第37条第1項第11号)。
売主も買主も宅地建物取引業者
業者間の取引
宅地建物取引業法第78条第2項
第33条の2および第37条の2から第43条までの規定(第40条を含む)は、宅地建物取引業者相互間の取引には適用されません。民法第572条の枠内で契約で決めます。
補足:重要事項説明の書面交付と契約書面の交付の規定(第35条・第37条)は、業者間でも適用されます(第35条は第6項で読み替え)。
契約を結んだのが2020年3月31日以前
改正前の民法(瑕疵担保責任)が適用される
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第34条第1項/改正前民法第566条・第570条
施行日前に締結された売買契約については、なお従前の例によります。「隠れた瑕疵」を要件に、契約の目的を達することができないときは解除、そうでなければ損害賠償のみ、権利行使は事実を知った時から1年以内、という旧法の枠組みです。
補足:今から結ぶ契約には関係ありませんが、過去の売買をめぐる争いでは、契約日で適用条文が変わります。
どの型でも変わらないのは、民法第572条の「知りながら告げなかった事実」です。 免責の特約を結べるかどうかは型で変わりますが、告知書に知っていることを 全部書く、という出発点は同じです。当社が買主になる場合は三つ目の型で、 免責の範囲を契約書の条項の言葉で書き、査定額と同じ書面でお示しします。
知っていることは書く。
知らないことは「知らない」と書く。
売ったあとの責任は、免責の一語ではなく、告知書と契約書と危険負担の定めの 三つで決まります。当社は、その三つを査定の一部として売主の方と一緒に作り、 免責の範囲と金額を同じ書面でお出しします。結果として当社にお売りに ならなくても構いません。
雨漏り・シロアリ・傾きがあると分かっている
分かっていることは、告知書に書きます。書いた事実は契約の内容になり(民法第562条)、不適合ではなくなります。書かずに知っていた事実は、免責特約があっても第572条で責任が残ります。当社は、伺った内容と当社が現地で確認した状態を前提に価格を出し、契約書の免責条項に何を含めるかを条項の言葉でお示しします。直してから売る必要はありません(直せる範囲の話はリフォームの記事に)。
親の家で、自分は長く住んでいない。状態が分からない
知らないことは告げようがありません。第572条の例外は「知りながら告げなかった事実」ですから、知らない事実は免責の対象に入ります。告知書には「不明」と書きます。人の死の告知ガイドラインも、売主から不明と回答された場合には業者はその旨を告げれば足りる、としています。当社は、ご存じないことを無理に「無い」と書いていただくことはしません。当社が現地で確かめたことは、当社の確認事項として契約書面に反映します。
「建て替えられる」と説明されて買った家が、再建築不可だった(買主の側)
品質の不適合の問題であると同時に、売主や媒介業者が宅地建物取引業者であれば第47条第1号(重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為の禁止)の問題、契約の基礎とした事情の認識が真実に反していた場合の錯誤による取消し(民法第95条)の問題になり得ます。第566条の通知は、不適合を知った時から1年以内です。まず弁護士へ、そして重要事項説明書と契約書の記載を確かめてください。当社にできるのは、現況のままの買取価格をお出しすることと、前の道が建築基準法上の道路に当たるかどうかの資料(調べ方の記事の手順で取得したもの)をお渡しすることです。
過去に、この家で人が亡くなっている
自然死や日常生活の中での不慮の死は、ガイドライン上、原則として告げなくてもよい事案ですが、特殊清掃等が行われた場合は別で、売買には「何年たてば」という目安が置かれていません。買主から問われれば期間や死因にかかわらず告げる、というのがガイドラインの整理です。売主にとっては第572条の「知りながら告げなかった事実」に当たり得ますから、告知書に事案の時期・場所・死因・特殊清掃等の有無を書きます。氏名・年齢・家族構成・具体的な態様は不要です。当社は、それを前提に価格をお出しします。買い取れないわけではありません。
地中に古い基礎・浄化槽・井戸・瓦礫があるかもしれない
知っているなら告知書に書き、知らないなら「不明」と書きます。当社が買主になる場合、地中埋設物は免責の範囲に含める形で条項を書き、その分を価格に織り込みます。個人の買主に売る場合は、解体後に見つかった埋設物の撤去費用をどちらが負担するかを契約書で定めておかないと、第562条の追完(撤去)や第563条の代金減額の請求を受ける余地が残ります。
登記簿の面積と、実際の面積が違うかもしれない
数量の不適合には第566条の1年の制限がなく、第166条の時効(5年・10年)だけが働きます。公簿の面積で売買し面積の差による代金の精算をしないのか、実測して精算するのかを、契約書で決めておく必要があります。境界の確定と越境の片づけをどこまで売る前にやるかは、境界と越境の記事にまとめています。当社が買主になる場合は、査定の段階で公簿か実測かを先に決め、契約書に書きます。
再建築不可という制度そのものの説明、査定で見ている五つの点、買取までの流れは再建築不可物件の買取ページに、前の道が建築基準法上の道路に当たるかどうかは未接道の土地・建物の買取ページに、竿の部分の幅と長さの見方は旗竿地(路地状敷地)の買取ページにまとめています。
住宅ローンが原則使えず買主が現金の個人か業者になる理由と、私道負担の重要事項説明は売れない理由の記事に、面積の差と越境をどこまで片づけてから売るかは境界と越境の記事に、直せる範囲の線引きはリフォームの記事に、前の道と接道を役所の書類で確かめる手順は調べ方の記事にまとめています。
相続が起きたあとの手続は相続の記事に、名義がきょうだいの共有になっている場合は共有の記事に、名義のご本人がご自分で判断できなくなっているときは成年後見の記事に、建物が登記されていないときは未登記の記事に、土地が借地で地主の承諾が要るときは借地の記事に、登記簿に古い抵当権が残っているとき(権利の不適合にならないよう先に消すか、残したまま売るか)は古い抵当権の記事に、私道の通行・掘削の承諾が無いことを告知書にどう書き、法律上どう扱われるかは私道の通行・掘削の記事に、人が住んでいることを告げずに売ったときの権利の不適合(565条)と、住んだまま売るときの告知の中身は住んだまま売る記事に、壊してから売るときの解体の手続(建設リサイクル法の届出・石綿の事前調査・廃材の処理・滅失登記)と壊したあとの土地の扱いは解体して更地にするかの記事に、相続人の一人と連絡が取れないときの居場所の辿り方と家庭裁判所・地方裁判所の手続は相続人と連絡が取れないときの記事に、がけや古い擁壁に接する家の建て替えの条件(東京都のがけ条例)と区の助成はがけ・擁壁の記事にまとめています。
持っているあいだの税は固定資産税の記事に、売ったときの税は売ったときの税金の記事に、売らずに貸す案は貸したほうがいいのかの記事に、決めずに置いておいた場合に進むことは空き家の放置の記事に、取り壊して国に引き取ってもらう道は国庫帰属の記事にまとめています。
区ごとの建て替えの許可制度と窓口は、足立区・葛飾区・北区・板橋区・荒川区・墨田区のページにまとめています。区の許可制度で建て替えの道が開けるかどうかは、 重要事項説明で「契約の内容」に入る事項です。
売ったあとの責任と免責についての Q&A
買取のご相談の中で、実際によくいただくご質問をまとめました。 いずれも制度の一般的な説明です。個別の契約条項の有効性や、 不適合に当たるかどうかの判断は、弁護士へご確認ください。
このページについて
- 作成・運営
- 株式会社First Realty
- 代表者
- 代表取締役 野口 勇
- 宅地建物取引士
- 野口 勇(登録番号 第261304583号)
- 免許
- 宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
- 所在地
- 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-1-3 アミーホール5F
- 電話
- 03-6821-4617(10:00 – 19:00/定休 火曜・水曜)
- 加盟団体
- 公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会/公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会
- 参照した運用の資料
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)・ 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月8日)
- 条文・資料の確認日
- 2026年9月20日
- 最終更新
このページが参照した公開情報
本文の条番号は、以下の公開情報を2026年9月20日に確認して記載しています。 民法は2020年4月1日施行の改正で売主の担保責任の規定が変わっているため、 改正前(2020年3月31日時点)の条文と改正法の経過措置も取得して確かめました。 民法と消費者契約法は2026年6月24日にも改正されているため、このページで引用した 条文に変更が無いことを改正前の版と突き合わせて確認しています。 制度・様式・運用は更新されますので、お確かめのうえご利用ください。 このページは制度の一般的な説明であり、個別の契約条項の有効性や、ある不具合が 契約不適合に当たるかどうかを判定するものではありません。裁判例は、裁判所の サイトで原文を確認できたものが無かったため引用していません。
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索
- 民法 2020年3月31日時点の条文(改正前の第566条・第570条)|e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)|e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法施行令(昭和三十九年政令第三百八十三号)|e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)|e-Gov法令検索
- 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)|e-Gov法令検索
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)|e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版)|国土交通省(PDF)
- 宅地建物取引業法 法令改正・解釈について|国土交通省
- 報道発表資料「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました(令和3年10月8日)|国土交通省
- 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(本文)|国土交通省(PDF)
- 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(概要)|国土交通省(PDF)
当社は不動産の買取業者であり、法律相談を行う立場にも、訴訟を代理する立場にも ありません。契約条項の有効性と、売ったあとの争いの見通しは弁護士へ、登記は 司法書士へ、建物の状態の調査は建築士(建物状況調査を行う者)へ、建て替えの可否は お住まいの区の建築課へ、譲渡所得の取扱いは税理士または所轄の税務署へ ご確認ください。当社にできるのは、現況のままの買取価格を、免責の範囲・引渡しの 状態・危険負担の定めと同じ書面でお出しすることと、査定の過程で確認した建物・ 登記・道路・接道の資料をお渡しすることです。その資料は、他の買主や弁護士と お話しになるときに、そのままお使いいただけます。
「売ったあとが心配」の段階で、ご相談ください
告知書の項目で状況を伺い、免責の範囲と金額を同じ書面でお示しします。担当者より1営業日以内にご連絡いたします。査定・ご相談は完全無料です。
直さなくても、
査定はお受けできます。
雨漏りがあっても、床下を見たことがなくてもご相談いただけます。 知っていることを一緒に書き出し、免責の範囲と金額を同じ紙でお示しします。 査定は完全無料、秘密厳守です。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
