
配偶者居住権がついた家は、
売れるのか
親の一方が亡くなり、もう一方が住み続けている家には、所有権とは別の「住む権利」が付いていることがあります。 2020年4月からの配偶者居住権と短期居住権、登記の数、売れるもの・売れないもの、消える場面と税を条文で整理しました。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
家の持ち主と、家に住む権利を持つ人が、
別々になっていることがあります。
父が亡くなり、実家には母が一人で住んでいる。家の名義は子が相続したが、登記簿に「配偶者居住権設定」と書いてある。 母が施設に入ることになり、空く家をどうするか決めたい——。 足立区・葛飾区・北区・板橋区・荒川区・墨田区の木造密集地域の再建築不可の家でも、 親の一方が住み続けたまま相続を迎える家は少なくありません。
2020年4月1日から、民法に「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」ができました。家の所有権は子が相続し、住む権利は残された親が持つ、という分け方ができるようになったのです。登記された配偶者居住権は、全国で年900件前後と多くはありませんが、付いている家では、所有者だけでは売り方も直し方も決められず、消し方によって税のかかり方も変わります。
このページでは、配偶者居住権がついた家について確かめることを七つに整理します。条文は2026年9月30日にe-Gov法令検索で本文を取得して突き合わせ、運用は法務省・法務局・国税庁の公開資料と、 法務省の登記統計を同日に確認しました。先に三つ申し上げておきます。当社は、配偶者居住権が成立しているかどうか、その額がいくらかの判断をしません。税額、弁護士・司法書士・税理士の費用、価格への影響の見込みは書きません。そして、お住まいの配偶者の方に、当社から転居をお願いすることはしません。査定書では、配偶者居住権が残る前提か、消えたあとの前提かを必ず分けて書きます。
「売れるかどうか」の前に、
どの決まりが、何を要求しているかの話をします。
いずれもe-Gov法令検索の条文本文と、法務省・法務局・国税庁の公開資料、法務省の登記統計で確認した内容です。 個々の家に配偶者居住権が成立しているか、その額がいくらか、登記が受け付けられるかを判定するものではありません。 判定は弁護士・司法書士・法務局へ、税は税理士へご確認ください。 ここでは、どの決まりが、どの場面で、誰に何を求めているのかまでをお伝えします。
配偶者居住権は、亡くなった方の家に住んでいた配偶者が、家の持ち主が誰になっても、原則として亡くなるまで無償で住み続けられる権利です。2020年4月1日以後の相続にだけあります
被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合で、遺産の分割によって取得するものとされたとき、または配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、その建物の全部について無償で使用・収益をする権利(配偶者居住権)を取得します(民法第1028条第1項)。存続期間は、遺産分割の協議・遺言・家庭裁判所の審判で別段の定めをしない限り、配偶者の終身の間です(第1030条)。つまり、家の所有権は子が相続し、住む権利は母(または父)が持つ、という分け方ができます。法務省は、これにより配偶者が所有権を取得するより低い価額で住まいを確保でき、預貯金などの他の遺産をより多く取得できると説明しています。この章は、e-Govで民法を2020年3月31日時点と4月1日時点で読み比べると、第8章が「遺留分」から「配偶者の居住の権利」に替わり、第1028条から第1041条が新しく現れることで確かめられます。改正法の附則第10条により、2020年4月1日より前に開始した相続には適用されず、同日より前にされた遺贈(遺言)では配偶者居住権を設定できません。二つ注意があります。一つは、被相続人が相続開始の時に建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権は成立しないこと(第1028条第1項ただし書)。もう一つは、国税庁の質疑応答事例が、「相続させる」遺言(特定財産承継遺言)によって配偶者居住権を取得させることはできないとしていることです。遺言で与えるなら「遺贈する」と書く必要があります。
当社は、査定の前に、ご相談の家の相続がいつ開始したか(2020年4月1日の前か後か)と、遺言の書き方・遺産分割の内容を伺い、配偶者居住権が成立し得る家かどうかを査定書の前提に書きます。成立しているかどうかの最終的な判断は、弁護士・司法書士の領分です。
根拠:民法第1028条第1項、第1030条/民法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)附則第1条第4号、第10条(e-Gov法令検索・2020年3月31日時点と4月1日時点の読み比べ)/法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」/国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」1
登記された配偶者居住権は、全国で年900件前後です。相続で建物の名義が移るのが年20万件を超えるのに比べると、約245件に1件。珍しい権利ですが、付いている家は確かにあります
法務省の登記統計(第14表「法務局及び地方法務局管内別・種類別 建物の権利に関する登記の件数及び個数」)で、「配偶者居住権の設定」の件数を施行の年から並べると、2020年129件(4月から12月)、2021年880件、2022年892件、2023年911件、2024年861件、2025年839件でした。6年間の合計は4,512件です。同じ2025年の表で、「相続による所有権の移転」(建物)は205,799件でしたから、相続で建物の名義が移る登記のおよそ245件に1件の割合です。東京法務局(東京都内を管轄)の分は、2021年178件、2022年155件、2023年147件、2024年127件、2025年131件でした。この数には、成立していても登記されていない配偶者居住権は入っていません。国税庁の質疑応答事例は、配偶者居住権の設定の登記は対抗要件であって成立要件ではない、としています。登記簿に載っていなくても、遺産分割協議書や遺言で配偶者居住権が定められていることはあり得ます。
当社は、査定のたびに登記事項証明書を当社の負担で取り、権利部(乙区)に配偶者居住権の登記があるかを確かめます。登記が無い場合でも、ご家族が遺産分割協議書や遺言をお持ちなら、その内容を伺ってから査定書を作ります。
根拠:法務省「登記統計」第14表(e-Stat・2020年〜2025年の年次)/国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」1/不動産登記規則第4条第4項
配偶者居住権の登記は、建物だけに入ります。建物の持ち主と配偶者が共同で申請し、税率は1,000分の2。先に、建物を相続した人の名義にしておく必要があります
登記できる権利の一つとして、不動産登記法第3条第9号に「配偶者居住権」が挙げられ、登記事項は存続期間と、第三者に居住建物の使用・収益をさせることを許す定めがあればその定めです(第81条の2)。登記簿では、所有権以外の権利を記録する権利部の乙区に入ります(不動産登記規則第4条第4項)。居住建物の所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負い(民法第1031条第1項)、登記を備えれば、その建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗できます(同条第2項が準用する第605条)。つまり、登記された配偶者居住権は、建物を買った人にも主張できます。法務局の申請書の記載例では、遺産分割で配偶者居住権を取得した場合、権利者(配偶者)と義務者(建物の所有者)が共同で申請し、登記原因証明情報・義務者の登記識別情報・義務者の印鑑証明書(3か月以内)を添えます。建物が亡くなった方の名義のままなら、先に建物を相続した人への相続登記が必要です。遺贈の場合も、遺言執行者の有無で申請書の形が分かれて記載例が用意されています。登録免許税は不動産の価額の1,000分の2(登録免許税法別表第一・一(三の二))で、計算した額が1,000円未満なら1,000円です。記載例も土地は対象にしていません。敷地の使い方は、建物の配偶者居住権に基づく権利として相続税の評価で扱われますが(相続税法第23条の2第3項)、土地の登記簿には載りません。
当社は、査定書の「登記の状況」の欄に、建物の乙区に配偶者居住権の登記があるか、あれば存続期間(終身か年限か)と第三者に使わせてよい定めの有無を書き写します。登記の申請は司法書士へ。当社が申請を代わることはできません。
根拠:不動産登記法第3条第9号、第81条の2/不動産登記規則第4条第4項/民法第605条、第1031条/登録免許税法別表第一・一(三の二)/相続税法第23条の2第3項/法務局「不動産登記の申請書様式について」(8 配偶者居住権:設定(遺産分割)・設定(遺贈・遺言執行者あり/なし)の記載例)
配偶者居住権は、売ることも人に譲ることもできません。売れるのは建物の所有権のほうで、登記された配偶者居住権は買った人にもそのまま付いていきます
配偶者居住権は、譲渡することができません(民法第1032条第2項)。一方で、居住建物の所有者が建物の所有権を売ることを禁じる条文はありません。ただし、登記された配偶者居住権は建物を買った人にも対抗できるので(第1031条第2項・第605条)、買主は、配偶者が住み続ける建物を買うことになります。配偶者の側にも決まりがあります。配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって使用・収益しなければならず(第1032条第1項)、所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築・増築をしたり、第三者に使用・収益をさせたりできません(同条第3項)。居住建物の使用・収益に必要な修繕は配偶者ができ、配偶者が相当の期間内にしないときは所有者ができます(第1033条)。費用は、配偶者が居住建物の通常の必要費を負担します(第1034条第1項)。固定資産税の納税義務者は固定資産の所有者なので(地方税法第343条)、建物の所有者が納めることになりますが、法務省は、所有者は納めた分を配偶者に請求できると説明しています。再建築不可の家は、建て替えができない分、手を入れて使い続けることが多い家です。配偶者居住権が付いていると、所有者(子)が大きく直したいときも、配偶者(親)が直したいときも、どちらか一方だけでは決められない場面が出てきます。
当社は、配偶者居住権が付いたままの建物についても査定のご相談をお受けします。ただし、査定書には「配偶者居住権が残る前提」か「消えたあとの前提」かを必ず明記し、二つを混ぜた金額は出しません。お住まいの配偶者の方に、当社から転居をお願いすることはしません。
根拠:民法第605条、第1031条第2項、第1032条第1項〜第3項、第1033条、第1034条第1項/地方税法第343条第1項/法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」Q7
配偶者居住権が消えるのは、配偶者が亡くなったとき、期間が満了したとき、建物が全部なくなったとき、そして合意・放棄・消滅請求のときです。消えたら抹消の登記を。建物1個1,000円です
民法第1036条は、使用貸借の終了の規定(第597条第1項・第3項)と賃借物の全部滅失の規定(第616条の2)を配偶者居住権に準用しています。したがって、存続期間を定めた場合はその満了で、定めのない場合は配偶者の死亡で、建物の全部が滅失その他の事由で使用・収益できなくなった場合はそれで、配偶者居住権は終わります。配偶者が用法の義務や承諾の決まりに違反し、所有者が相当の期間を定めて是正を催告しても是正されないときは、所有者は意思表示で配偶者居住権を消滅させられます(第1032条第4項)。このほか、法務省は、配偶者が居住権を放棄することを条件に、所有者から金銭の支払を受けることは可能と説明しています。消えたあと、配偶者は建物を返還しますが、配偶者が建物の共有持分を持っている場合は、所有者は配偶者居住権の消滅を理由に返還を求められません(第1035条第1項)。登記は抹消が必要です。法務局の記載例では、配偶者居住権者の死亡による消滅なら、権利者である建物の所有者が申請人になり、死亡の記載のある戸籍全部事項証明書などを登記原因証明情報として添えます。合意による消滅なら、所有者と配偶者の共同申請です。登録免許税はどちらも建物1個につき1,000円で、配偶者居住権の登記の後に賃借権の登記がある場合は、その賃借権者の承諾が要ります。再建築不可の家で気をつけたいのは、全部滅失です。火災などで建物が全部なくなると、配偶者居住権は消えますが、接道の条件を満たさない敷地には、原則として建て直すこともできません。
当社は、配偶者居住権の登記が残ったまま配偶者の方が亡くなっている家でも、戸籍の写しを見せていただければ、抹消の登記を前提にした査定書をお出しします。売買の契約は、抹消の登記が済んでから(または同時に)結びます。
根拠:民法第597条第1項・第3項、第616条の2、第1032条第4項、第1035条第1項、第1036条/登録免許税法別表第一・一(十五)/法務局「不動産登記の申請書様式について」(配偶者居住権の登記の抹消(死亡による消滅)・(合意消滅)の記載例)/法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」Q9
配偶者居住権を「話合いで消す」ときは、税の扱いが変わります。所有者がお金を払わなければ所有者に贈与税、払えば配偶者の譲渡所得。亡くなって消えたときは、この扱いはありません
国税庁の相続税法基本通達9-13の2は、配偶者居住権が、配偶者と建物の所有者との合意、配偶者による放棄、または民法第1032条第4項の消滅請求によって消滅した場合に、建物(または敷地)の所有者が対価を支払わなかったとき、または著しく低い対価しか支払わなかったときは、原則として、所有者が、消滅の直前に配偶者が持っていた配偶者居住権(または敷地を使う権利)の価額に相当する利益を、配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うとしています(対価を払った場合はその額を差し引きます)。一方、同じ通達の注は、民法第1036条が準用する規定により、期間の満了・配偶者の死亡・建物の全部滅失で配偶者居住権が消滅した場合には、この取扱いはないとしています。逆に、配偶者が消滅の対価を受け取った場合、その対価は譲渡所得の収入金額に当たります(所得税基本通達33-6の8)。つまり、施設への入居などで家を売るために配偶者居住権を先に消す場合、お金を払うか払わないかで、税がかかる人が所有者(贈与税)か配偶者(所得税)かに分かれます。配偶者居住権の価額の計算の仕方は相続税法第23条の2に定めがあり、国税庁の「No.4666 配偶者居住権等の評価」に計算例がありますが、個々の家での額はここでは書きません。
当社は、配偶者居住権を消してから売るご相談では、「消す前の査定」と「消したあとの査定」を分けて書面にします。消すときの対価をいくらにするか、税がいくらかかるかは、税理士にご確認ください。当社がその額を決めたり、助言したりすることはしません。
根拠:相続税法基本通達9-13の2(注を含む)/所得税基本通達33-6の8/相続税法第23条の2/国税庁「No.4666 配偶者居住権等の評価」
登記しない「配偶者短期居住権」もあります。亡くなった方の家に無償で住んでいた配偶者は、少なくとも6か月は住み続けられます。この間に家を売ると、売主が責任を問われることがあります
配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合、配偶者は、配偶者居住権を取得したとき等を除き、一定の日まで、その建物を相続や遺贈で取得した人(居住建物取得者)に対し、無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を持ちます(民法第1037条第1項)。期間は、配偶者を含む共同相続人で遺産分割をする場合は、遺産分割で建物の帰属が確定した日か相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで。それ以外の場合(遺言で配偶者以外の人に遺贈された・配偶者が相続放棄をした等)は、居住建物取得者から消滅の申入れを受けた日から6か月を経過する日までです。この間、居住建物取得者は、第三者への譲渡その他の方法で配偶者の使用を妨げてはなりません(同条第2項)。法務省は、配偶者短期居住権は登記できず、建物が第三者に譲渡されてしまうとその第三者には主張できないが、配偶者は建物を譲渡した者に対して債務不履行に基づく損害賠償を請求することが考えられる、と説明しています。配偶者短期居住権は、配偶者居住権を取得すると消え(第1039条)、配偶者居住権と同じく譲渡できず、通常の必要費は配偶者の負担です(第1041条)。これも2020年4月1日以後に開始した相続に適用されます。
当社は、亡くなった方の配偶者がまだ住んでいる家について、配偶者の方のご了解がないまま、引渡しの日を決める契約はしません。査定書は今の状態でお出しし、引渡しの時期は配偶者の方の転居の予定に合わせてご相談します。
根拠:民法第1037条、第1039条、第1041条/民法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)附則第10条第1項/法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」Q10〜Q14
施行から6年で、全国4,512件。
東京法務局の分は年130件前後です。
法務省の登記統計(第14表「法務局及び地方法務局管内別・種類別 建物の権利に関する登記の件数及び個数」)から、 「配偶者居住権の設定」の件数を2026年9月30日にe-Statで確認して並べました。 登記されていない配偶者居住権は含まれません。
| 年 | 全国 | 東京法務局 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 129件 | 21件 | 4月1日施行のため4〜12月 |
| 2021年 | 880件 | 178件 | |
| 2022年 | 892件 | 155件 | |
| 2023年 | 911件 | 147件 | |
| 2024年 | 861件 | 127件 | |
| 2025年 | 839件 | 131件 | 同じ年の相続による建物の所有権移転は205,799件 |
出典:法務省「登記統計」(e-Stat・年次・第14表)。件数は登記の申請件数で、1件で複数の建物を登記することがあります。 2025年の全国839件は、同じ年の「相続による所有権の移転」(建物)205,799件のおよそ245件に1件です。
八つの手続を、
確かめる・付ける・使う・消す・売るの順に並べます。
以下は、条文と法務省・法務局・国税庁の案内に載っている決まりだけを2026年9月30日に確認して並べたものです。 金額は法令が定めている登録免許税の税率と額だけで、弁護士・司法書士・税理士の費用、 手続にかかる実日数の見込みは含めていません。
登記簿で確かめる
査定の前。親の一方が亡くなり、もう一方が住んでいる家
不動産登記法第3条第9号、第81条の2/不動産登記規則第4条第4項
建物の登記事項証明書の権利部(乙区)に「配偶者居住権設定」の登記があるか、あれば存続期間と、第三者に使用・収益をさせてよい定めがあるかを見る。
補足:登記は成立要件ではない(国税庁)。登記が無くても、遺産分割協議書や遺言で配偶者居住権が定められていないかを家族に確かめる。2020年3月31日以前に開始した相続では配偶者居住権は成立しない。
配偶者居住権を取得する(遺産分割・遺贈)
2020年4月1日以後に開始した相続
民法第1028条、第1029条/附則(平成30年法律第72号)第10条
相続人の遺産分割協議で定めるか、遺言で遺贈する。協議が調わないときは、家庭裁判所の審判で、相続人間の合意があるとき、または配偶者の生活維持のため特に必要があるときに限り、取得を定められる。
補足:「相続させる」遺言では取得させられない(国税庁)。2020年4月1日より前の遺言の遺贈は不可。被相続人が配偶者以外と建物を共有していたら成立しない。
建物の相続登記(所有者側)
配偶者居住権の設定の登記より先に
不動産登記法第63条第2項
建物が亡くなった方の名義のままなら、建物の所有権を相続した人への相続登記を先に申請する(法務局の記載例)。登録免許税は1,000分の4。
補足:相続登記の申請義務(取得を知った日から3年)は、配偶者居住権の有無にかかわらず同じ。
配偶者居住権の設定の登記
取得したら、できるだけ早く(法務省)
民法第1031条/登録免許税法別表第一・一(三の二)
権利者(配偶者)と義務者(建物の所有者)の共同申請。所有者には登記を備えさせる義務がある。登録免許税は建物の価額の1,000分の2(1,000円未満なら1,000円)。
補足:義務者の登記識別情報と印鑑証明書(3か月以内)が要る。遺贈の場合は遺言執行者の有無で申請書の形が分かれる。土地には登記しない。
第三者に使わせる(施設入居のときなど)
配偶者が住まなくなったとき
民法第1032条第3項
配偶者は、所有者の承諾を得れば、居住建物を第三者に貸すなどして使用・収益させられる。配偶者居住権そのものは売れない(同条第2項)。
補足:法務省は、施設入居の資金を、承諾を得て賃貸した賃料収入で確保する例を挙げている。第三者に使わせてよい定めは登記事項。
合意・放棄で消す
家を売るために、配偶者の存命中に消すとき
相続税法基本通達9-13の2/所得税基本通達33-6の8
所有者と配偶者の合意、または配偶者の放棄で消せる。所有者が対価を払わない(著しく低い)と、原則として所有者が配偶者から贈与を受けたものとして扱われる。対価を払えば、配偶者の譲渡所得の収入になる。
補足:抹消の登記は所有者と配偶者の共同申請で、建物1個につき1,000円。対価の額と税は税理士へ。
配偶者の死亡・期間満了・全部滅失で消える
配偶者が亡くなったとき/定めた期間が終わったとき/建物が全部なくなったとき
民法第1036条(第597条第1項・第3項、第616条の2の準用)
配偶者居住権はこれらの事由で終わる。死亡による消滅の抹消登記は、建物の所有者が申請人になり、死亡の記載のある戸籍全部事項証明書などを添える(法務局の記載例)。建物1個につき1,000円。
補足:これらの事由による消滅には、相続税法基本通達9-13の2の贈与の取扱いはない(同通達の注)。配偶者居住権の登記の後に賃借権の登記があれば、その承諾が要る。
売買
配偶者居住権が消えたあと、または付いたまま
民法第1031条第2項、第605条、第1037条第2項
配偶者居住権が消え、抹消の登記が済めば、所有者は通常どおり売れる。付いたまま売ることを禁じる条文はないが、登記された配偶者居住権は買主にも対抗できる。
補足:配偶者短期居住権の期間中は、居住建物取得者は譲渡などで配偶者の使用を妨げてはならない。当社は、どちらの前提の金額かを査定書に明記する。
どの手続にも共通するのは、「相続が2020年4月1日の前か後か」「登記があるかと、登記が無くても協議書や遺言に定めが無いか」 「消えるのが死亡・期間満了・滅失か、合意・放棄か」の三つです。 当社が買主になる場合は、どちらの前提の金額かを書面に明記してからお受けし、家の側の資料は当社が揃えます。
配偶者居住権が付いていても、
お断りすることはありません。
配偶者居住権が成立しているかの判断は弁護士・司法書士の、登記は法務局の、税は税理士の領分で、当社はその代わりをしません。 当社がするのは、今の状態の買取価格を書面でお出しすることと、 その前提(配偶者居住権の登記の有無・存続期間・残る前提か消えた前提か)を査定書に書き分けることです。 結果として当社にお売りにならなくても構いません。
父が亡くなり、母が一人で住んでいる。家は子が相続して、いずれ売りたい
2020年4月1日以後に開始した相続なら、お母さまには少なくとも配偶者短期居住権があり、遺産分割で家の帰属が決まる日か、亡くなってから6か月のいずれか遅い日まで、無償で住み続けられます(民法第1037条第1項第1号)。その間に家を売ることは、お母さまの使用を妨げる形ではできません(同条第2項)。遺産分割でお母さまに配偶者居住権を付けるかどうかは、相続人の話合いで決めます。付ければ、原則としてお母さまが亡くなるまで続き、登記されれば買主にも主張できます。当社は、付ける前でも付けたあとでも、今の状態の査定書をお出しします。付けるかどうかの判断は、弁護士・司法書士・税理士へ。
登記簿に「配偶者居住権設定」とある家を相続した。居住権を持っていた母は亡くなった
配偶者居住権は、配偶者の死亡で終わります(民法第1036条が準用する第597条第3項)。登記は自動では消えませんので、抹消の登記を申請します。法務局の記載例では、建物の所有者が申請人になり、お母さまの死亡の記載のある戸籍全部事項証明書などを添え、登録免許税は建物1個につき1,000円です。この消え方には、所有者に贈与税がかかる取扱いはありません(相続税法基本通達9-13の2の注)。当社は、戸籍の写しを見せていただければ、抹消を前提にした査定書をお出しし、契約は抹消が済んでから(または同時に)結びます。
配偶者居住権を持つ母が、施設に入ることになった
配偶者居住権は売れませんが、道は三つあります。一つは、そのまま持ち続けること。二つ目は、所有者の承諾を得て、家を人に貸すこと(民法第1032条第3項)。三つ目は、所有者との合意か放棄で消し、家を売ることです。三つ目では、所有者がお母さまに対価を払わなければ所有者に贈与税の問題が、払えばお母さまに譲渡所得の問題が出ます(相続税法基本通達9-13の2・所得税基本通達33-6の8)。お母さまご自身が判断できる状態でないときは、成年後見の手続が先になることがあります。当社は、「消す前」と「消したあと」の二つの査定書をお出しします。税額は税理士へ。
遺言に「妻に配偶者居住権を遺贈する」と書いてある
配偶者居住権は、遺贈で与えることができます(民法第1028条第1項第2号)。ただし、その遺言が2020年4月1日より前にされたものなら、その遺贈には配偶者居住権の規定が適用されません(附則第10条第2項)。「相続させる」と書かれた遺言では、配偶者居住権を取得させることはできないとされています(国税庁)。遺言の日付と書き方を確かめ、自筆の遺言書なら検認を経てから、建物の所有者と配偶者で設定の登記を申請します。遺言の読み方は弁護士・司法書士へ。当社は、遺言書のコピーを見せていただければ、配偶者居住権が付く前提で査定書を作ります。
配偶者居住権が付いたまま、建物を売りたい
所有者が建物の所有権を売ることを禁じる条文はありません。ただし、登記された配偶者居住権は買主にも対抗できるので(民法第1031条第2項・第605条)、買主は、配偶者が原則として亡くなるまで無償で住み続ける建物を買うことになります。配偶者居住権そのものは売れません(第1032条第2項)。当社は、付いたままの前提での査定のご相談もお受けし、存続期間(終身か年限か)・配偶者の方の意向・第三者に使わせてよい定めの有無を査定書の前提に書きます。付いたまま買い取れるかどうかは、この前提を見てから、書面でお答えします。
再建築不可という制度そのものの説明、査定で見ている五つの点、買取までの流れは再建築不可物件の買取ページに、道路の種類と建て替えの許可(第43条第2項)の見込みは未接道の土地・建物の買取ページと旗竿地(路地状敷地)の買取ページにまとめています。
相続が起きた直後に確かめること(相続放棄の3か月・相続登記の義務・空き家の3,000万円控除)は相続の記事に、遺言が無く名義が祖父母のままの家(数次相続で相続人を確かめる戸籍の手順・法定相続情報証明制度・相続分の譲渡と放棄・遺産分割調停)は数次相続の記事に、遺言書が見つかった家(検認・法務局の保管制度・「相続させる」遺言と遺贈の違い・遺言執行者・遺留分)は遺言書の記事に、相続人は分かっているが居場所が分からないとき(戸籍の附票・不在者財産管理人・失踪宣告・所有者不明土地管理命令)は相続人と連絡が取れないときの記事に、共有になった家で一人が決められる範囲と10年の壁は共有の記事に、建物が登記されていないときは未登記の記事に、登記簿に古い抵当権が残っているときは古い抵当権の記事に、名義のご本人が判断できなくなっているときは成年後見の記事に、相続した土地を国に引き取ってもらう道は国庫帰属の記事にまとめています。
住宅ローンが原則使えず買主が限られる理由は売れない理由の記事に、持っているあいだの固定資産税は固定資産税の記事に、売ったときの税金(相続した家の取得費と3,000万円控除)は売ったときの税金の記事に、建築計画概要書で家の状態を自分で確かめる手順は調べ方の記事に、直して使える範囲はリフォームの記事に、貸したまま持つ道は貸したほうがいいのかの記事に、区の空き家の指導・勧告は空き家の放置の記事に、隣地との境界と越境は境界と越境の記事にまとめています。
土地が借地のときは借地の記事に、売ったあとの責任と知っていて告げなかった事実の扱いは売ったあとの責任の記事に、私道の通行・掘削の承諾は私道の通行・掘削の記事に、人が住んだまま売る道は住んだまま売る記事に、家を壊すときの手続と滅失登記は解体して更地にするかの記事に、がけ・擁壁の規制と土砂災害警戒区域はがけ・擁壁の記事に、浸水の想定と履歴は浸水・ハザードマップの記事にまとめています。
区ごとの建て替えの許可制度、不燃化特区、区役所の窓口は、足立区・葛飾区・北区・板橋区・荒川区・墨田区のページにまとめています。このページの配偶者居住権の登記は区役所ではなく、建物の所在地を管轄する法務局の窓口です。
配偶者居住権がついた家についての Q&A
買取のご相談の中で、実際によくいただくご質問をまとめました。 いずれも制度の一般的な説明です。個々の家に配偶者居住権が成立しているか、登記が受け付けられるか、税がいくらかは、 弁護士・司法書士・法務局・税理士へご確認ください。
このページについて
- 作成・運営
- 株式会社First Realty
- 代表者
- 代表取締役 野口 勇
- 宅地建物取引士
- 野口 勇(登録番号 第261304583号)
- 免許
- 宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
- 所在地
- 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-1-3 アミーホール5F
- 電話
- 03-6821-4617(10:00 – 19:00/定休 火曜・水曜)
- 加盟団体
- 公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会/公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会
- 参照した運用の資料
- 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」(Q&A)・「配偶者居住権の価値評価について(簡易な評価方法)」・ 法務局「不動産登記の申請書様式について」(配偶者居住権の設定・抹消の記載例)・ 国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」「No.4666 配偶者居住権等の評価」・相続税法基本通達9-13の2・所得税基本通達33-6の8・ 法務省「登記統計」(e-Stat)
- 条文・資料の確認日
- 2026年9月30日
- 最終更新
このページが参照した公開情報
本文の条番号は、以下の公開情報を2026年9月30日に確認して記載しています。 2020年4月1日の施行は、e-Gov法令検索で2020年3月31日時点と4月1日時点の民法を読み比べて確認しました。 登記統計の件数は確認日に公開されていた2025年分までのもので、毎年更新されます。 このページは制度の一般的な説明であり、個々の家に配偶者居住権が成立しているか、その額がいくらか、登記が受け付けられるか、税がいくらかを判定するものではありません。 配偶者居住権が付いた建物の買主と配偶者の関係の細部など、裁判例で扱いが決まる点は、原文を確認できていないため書いていません。
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索
- 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)|e-Gov法令検索
- 不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)|e-Gov法令検索
- 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)|e-Gov法令検索
- 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)|e-Gov法令検索
- 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)|e-Gov法令検索
- 残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。|法務省
- 配偶者居住権の価値評価について(簡易な評価方法)(PDF)|法務省
- 不動産登記の申請書様式について(8 配偶者居住権)|法務局
- 配偶者居住権設定(遺産分割)の場合の記載例(PDF)|法務局
- 配偶者居住権の登記の抹消(合意消滅)の場合の記載例(PDF)|法務局
- 配偶者居住権の登記の抹消(死亡による消滅)の場合の記載例(PDF)|法務局
- 「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)|国税庁
- 1 配偶者居住権の概要(PDF)|国税庁
- 2 配偶者短期居住権の概要(PDF)|国税庁
- No.4666 配偶者居住権等の評価|国税庁
- 相続税法基本通達 第9条《その他の利益の享受》関係(9-13の2)|国税庁
- 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-6の8)|国税庁
- 登記統計 総括・不動産・その他(年次)|e-Stat(法務省)
当社は不動産の買取業者であり、登記や裁判所の手続の代理も、法律相談・税務相談も行う立場にありません。 配偶者居住権の成否と内容は弁護士・司法書士へ、登記は司法書士・法務局へ、評価額と税は税理士へご確認ください。 当社にできるのは、今の状態の買取価格を書面でお出しすることと、 その前提(配偶者居住権の登記の有無・存続期間・残る前提か消えた前提か)を査定書に書き分けること、 家の側の資料(登記事項証明書・公図・固定資産評価証明書)を当社の負担で揃えることです。 その書面は、ご家族や専門家とお話しになるときに、そのままお使いいただけます。
配偶者居住権が付いていても、今の状態のままご相談ください
残る前提と消えた前提を分けて査定書にします。担当者より1営業日以内にご連絡いたします。査定・ご相談は完全無料です。
親が住み続けている家も、
お断りすることはありません。
配偶者居住権の登記があっても、短期居住権の期間中でも、ご相談いただけます。 お住まいの方に当社から転居をお願いすることはありません。 査定は完全無料、秘密厳守です。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
