
登記簿に残った古い抵当権は、
家を売る妨げになるのか
妨げにはなります。ただし「売れない」ではなく、 「消す手続と、その費用」の話です。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
登記を取ってみたら、
昭和の抵当権が乙区に残っていた。
「昭和三十一年受付、債権額 金五万円、抵当権者は知らない名前」。 相続した実家の登記事項証明書を取ってはじめて気づくことがあります。 親も聞いたことがない、返したのかどうかも分からない、相手がどこにいるのかも分からない。 そして「抵当権が付いている家は売れない」と、どこかで言われて止まります。
正確ではありません。止まっているのは、不動産登記法第60条が、登記の抹消を所有者と抵当権者の共同申請と定めているところです。相手が見つからないときの道は、同じ法律の第70条と第70条の2に 三つ用意されています。うち一つは2023年4月1日に新しくできた道で、 古い会社の抵当権は、供託をしなくても消せるようになりました。
このページでは、知っておきたいことを七つに整理します。条文は2026年9月19日にe-Gov法令検索で本文を取得して突き合わせ、 供託の手続と金額は法務省民事局の供託Q&Aと記載例を同日に本文で確認しました。 そして先に一つ申し上げておきます。当社は、司法書士・弁護士の費用と、手続に実際にかかる日数の目安を書いていません。法律に定めが無く、当社が実測した数字も持っていないからです。 書いているのは、条文の数字と、法務省の記載例の数字だけです。
消す手続の話より先に、
なぜ消えていないのかの話をします。
いずれもe-Gov法令検索の条文本文と、法務省民事局の公開情報で確認した 内容です。個別の抵当権の効力、時効の成否、所在不明の認定を判定するもの ではありません。判断は、司法書士・弁護士・法務局へご確認ください。 ここでは、どの条文にもとづいて、何が、どういう順番で必要になるのかまでを お伝えします。
登記簿の乙区に、何十年も前の抵当権が残っている。まず、それが何かを条文で確かめます
登記事項証明書は、表題部・権利部の甲区(所有権)・権利部の乙区(所有権以外の権利)で構成されます。抵当権はこの乙区に載ります。抵当権の登記事項は、不動産登記法第83条第1項により債権額と債務者の氏名・住所、第88条第1項により利息の定めと損害金(債務不履行による損害賠償額)の定めがあればその定め、と決まっています。ですから乙区には「債権額 金一万円 利息 年六分 損害金 定めなし 債務者 誰某 抵当権者 誰某」という形で、受付年月日とともに記録されています。古さは受付年月日で分かります。昭和39年の法改正より前にされた登記では、弁済期(返す約束の日)も登記事項でした(法務省の部会資料が紹介する登記実務の取扱い)。抵当権とは、民法第369条第1項により、債務者または第三者が占有を移さずに担保に差し入れた不動産から、抵当権者が他の債権者に先立って弁済を受ける権利です。担保できる利息は、原則として満期になった最後の2年分に限られます(第375条第1項)。相続した実家の登記を取ってみたら、親も知らない昭和二十年代・三十年代の抵当権が残っていた——というご相談は、木造密集地域の古い家では珍しくありません。
当社は査定の最初に、土地と建物の登記事項証明書を取得します。乙区に抵当権・根抵当権・仮登記・差押えなどの記録があれば、①何件あるか②受付年月日と債権額・利率③相手(抵当権者)が個人か法人か④その相手が今も存在するか、を整理してお渡しします。この整理は、売る・売らないにかかわらず、次の一歩を決めるための資料になります。
根拠:不動産登記法第83条第1項、第88条第1項/民法第369条第1項、第375条第1項/法務省 民法・不動産登記法部会資料12
消えていない理由は「自動では消えない」から。抹消は共同申請が原則で、時効も自動ではありません
借りたお金を返し終えても、登記は自動では消えません。不動産登記法第60条は、権利に関する登記の申請は登記権利者(ここでは所有者)と登記義務者(抵当権者)が共同でしなければならない、と定めています。抹消登記も同じです。抵当権者が書類に判を押してくれなければ、消えないまま何十年も残ります。では時効はどうか。債権は、改正前の民法第167条第1項で権利を行使できる時から10年、商行為による債権は旧商法第522条で5年、今の民法第166条第1項でも知った時から5年・行使できる時から10年で時効により消滅します。ところが民法第145条は、時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができない、と定めています。「時効です」と相手に告げる意思表示が要るのです。さらに第396条は、抵当権は債務者および抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しない、と定めています。つまり、抵当権者が誰でどこにいるのか分からなければ、時効の道も、共同申請の道も、どちらも使えません。これが、昭和の抵当権が令和まで残っている理由です。完済したことを示す領収書や完済証書が残っていないのも、普通のことです。
「返したはず」の書類が無くても、道はあります。次の03以降がその道です。当社は、登記の記載——受付年、債権額、弁済期の有無、相手が個人か法人か——から、①相手を探して共同申請②弁済期から20年の供託③解散した法人の30年④裁判所の公示催告、のどれが当てはまりそうかを先に仕分けし、査定と一緒にお渡しします。仕分けは当社が、手続は司法書士が、という分担です。
根拠:不動産登記法第60条/民法第145条、第166条第1項、第396条/改正前民法第167条第1項/旧商法第522条(いずれも2020年3月31日時点の条文)
最初にすることは、相手を探すことです。相手が見つかれば、共同申請で消えます
抵当権者の欄が個人なら、その方が亡くなっていれば相続人が登記義務者になります。法人なら、合併していれば合併後に存続した法人または合併により設立された法人が引き継いでいます。この探し方は、不動産登記規則第152条の2が定める調査の型そのものです。自然人については、登記簿上の住所の市町村への住民票の写し・除票・戸籍・戸籍の附票の請求、死亡が判明すれば出生時からの戸籍で相続人を追い、判明した相続人の住民票を請求し、登記簿上の住所と判明した所在地へ書留郵便その他配達を試みたことを証明できる方法で書面を送る(同条第1号)。法人については、登記所への登記事項証明書の請求、合併していれば承継法人について同じ請求、代表者(解散していれば清算人または破産管財人)の住民票等の請求、そして書面の送付(同条第2号)。相手が見つかって協力が得られれば、抹消登記は共同申請でできます。登録免許税は、登記の抹消について不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一・一(十五))。抵当権者が今も存在する金融機関の前身である場合は、その機関に抹消書類の交付を求めるのが本筋です。たとえば旧住宅金融公庫の抵当権は独立行政法人住宅金融支援機構が引き継いでおり、完済時の抹消書類が手元に無くても再交付の申請ができ、必要書類の到着から3週間程度で書類が送られる、と機構のページに案内されています(再交付の手数料と機構からの郵送料は機構負担、機構への郵送料は申請人負担)。
戸籍・住民票の請求は、司法書士・弁護士が職務上の権限で行う領域で、当社は代行できません。当社にできるのは、不動産の登記事項証明書と閉鎖登記簿の謄本、相手が法人であれば商業登記の登記事項証明書を取得し、「相手は誰で、今どうなっているか」まで整理することです。そこから先は、司法書士へつなぐ形になります。当社の負担で依頼することはできませんが、何を頼めばよいかの整理と、その間の査定額の見通しはお出しします。
根拠:不動産登記法第60条/不動産登記規則第152条の2第1号・第2号/登録免許税法別表第一・一(十五)/住宅金融支援機構「融資金完済時にお渡しした抵当権抹消に必要な書類がお手元にない方」
相手が見つからないとき①:弁済期から20年を過ぎていれば、供託して一人で消せます
不動産登記法第70条第4項後段は、共同して抹消を申請すべき者の所在が知れない場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息および債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときは、登記権利者が単独で抵当権の登記の抹消を申請できる、と定めています。法務省の供託Q&A(Q29)はこの要件を四つに整理しています。①抵当権者等の登記義務者が行方不明で共同申請ができないこと②弁済期から20年以上経過していること③債務者・物上保証人等が債務履行地の供託所に元本・利息・損害金を供託すること④供託書正本を添えて単独で抹消を申請すること。ここで大事なのは金額です。抵当権が担保する利息は最後の2年分(民法第375条)ですが、供託は条文どおり「全額」です。法務省の記載例((10)担保権者の所在不明)には数字が載っています。昭和29年6月1日に1万円を弁済期昭和34年7月1日・利息年6分の約定で借り、損害金の定めが無い抵当権について、令和2年7月1日に供託する場合、元金1万円、昭和29年6月1日から昭和34年7月1日までの利息3,050.8円、昭和34年7月2日から令和2年7月1日までの遅延損害金36,600円、合計49,651円。元本の5倍近くになりますが、金額としては数万円です。戦前の「金参百円」なら、なお小さくなります。利率は、登記に定めがあればその定め、定めが無ければ法定利率で計算します。2020年3月31日以前に生じた利息と、その日以前に遅滞となった分の遅延損害金は、改正前の民法第404条の年5%(商行為による債務は旧商法第514条の年6%)で、民法改正法の附則第15条・第17条第3項により最後まで従前の例によります。今の法定利率は年3%で、令和8年4月1日から令和11年3月31日までも年3%に据え置かれることが法務省から告示されていますが、昭和・平成初期の借入には、上の経過措置により改正前の利率が適用されます。損害金の定めが無いときは、約定利率が法定利率を超えていれば約定利率によります(民法第419条第1項ただし書。記載例が利息と同じ年6分で損害金を計算しているのはこのためです)。弁済期は、昭和39年改正前の登記なら登記簿の記載、移記のときに省略されていれば閉鎖登記簿の記載、それ以降の登記なら申請人が出す資料で判定し、根抵当権は元本確定の日をもって弁済期とみなす——というのが、法務省の部会資料が紹介している登記実務の取扱いです。供託所は、債務の履行地の供託所(民法第495条第1項)で、履行地の定めが無ければ債権者の現在の住所(第484条第1項)です。登記簿上の住所が分からないときは、債務者の住所地の最寄りの供託所に供託できる、とQ29は案内しています。利息・遅延損害金の計算には、法務省が配布する計算ソフトウェア(Windows用)があります。
供託は、弁済と同じ効果を持つ金銭を法務局に預ける手続です。「返したはず」であっても、この道を使うなら供託は要ります(条文がそう定めています)。逆に、債権額が大きく利率が高い平成の抵当権では、20年分以上の遅延損害金を足した供託額が元本を大きく上回り、この道は事実上使えません。法務省の資料も「貨幣価値が大きく変動しない現代においては供託要件を満たすことが困難な例が生ずる」と書いています。当社は、登記の数字から供託額のおおよその見当を付け、この道が現実的かどうかを査定の段階でお伝えします。
根拠:不動産登記法第70条第1項・第4項/不動産登記令別表二十六の項添付情報欄ニ/民法第375条、第404条、第419条第1項、第484条第1項、第495条第1項/改正前民法第404条/旧商法第514条/民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第15条・第17条第3項/法務省 供託Q&A Q29・供託書等の記載例(10)・令和8年4月1日以降の法定利率について
相手が見つからないとき②:抵当権者が解散した会社なら、30年で供託なしに消せます(2023年4月1日施行)
2023年4月1日に施行された不動産登記法第70条の2は、こう定めています。共同して抹消を申請すべき法人が解散し、第70条第2項に規定する方法(不動産登記規則第152条の2)により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないため共同申請ができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、登記権利者は単独で抵当権の登記の抹消を申請できる。供託は要りません。改正前は、法人について「所在が知れない」と認められるのは、商業・法人登記簿に記録がなく閉鎖登記簿も保存期間を過ぎて残っていない場合などに限定して解釈され、清算人の生死や所在が分からないだけなら裁判所に清算人の選任を求めてその清算人と手続をすべきだと解されてきた、と法務省の部会資料は説明しています。新しい条文は、ここを「法定の調査を尽くしても清算人の所在が判明しない」で足りるとしました。調査の型は規則第152条の2第2号で、法人の登記事項証明書の請求、合併していれば承継法人についての同じ請求、清算人・破産管財人の住民票等の請求、法人の登記簿上の住所と清算人の住所への書留等による書面の送付です。法務省の概要資料は「公的書類等で法人の清算人の所在を調査(現地調査までは不要)」と整理しています。添付情報は、被担保債権の弁済期を証する情報(金銭消費貸借契約証書・弁済猶予証書・弁済期の記載がある閉鎖登記簿謄本等)、法人の解散の日を証する情報(法人の登記事項証明書等)、そして調査の結果を記載した調査報告書(収集した書類と郵便記録等を添付)です(法務省民二第538号通達)。同じ通達は、清算人が死亡していることが判明した場合は「清算人の所在が判明しない」に当たること、清算人の住民票の除票等が廃棄されて添付できないときは不在住証明書・不在籍証明書等を添付し、それも交付を受けられなければその旨を調査報告書に記載すること、登記原因は「不動産登記法第70条の2の規定による抹消」とし日付を要しないこと、まで定めています。会社名だけが残り、商業登記を調べても閉鎖登記簿すら見当たらない——この条文が想定しているのは、そういう相手です。
弁済期から20年を過ぎていれば04の供託の道、30年を過ぎていれば供託なしのこの道、と二つは並び立ちます(法務省の部会資料も、別個の根拠規定と位置付けています)。どちらも、まず法人の登記事項証明書と閉鎖登記簿の謄本を取るところから始まります。この取得と整理は当社が行い、調査報告書の作成と登記申請は司法書士へ、という分担になります。
根拠:不動産登記法第70条の2/不動産登記規則第152条の2第2号/不動産登記令別表二十六の項添付情報欄ホ/法務省民二第538号通達(令和5年3月28日)/法務省「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」/法務省 民法・不動産登記法部会資料12
相手が見つからないとき③:裁判所の公示催告と除権決定。20年たっていない・金額が大きいときの道です
不動産登記法第70条第1項は、共同して抹消を申請すべき者の所在が知れないときは、非訟事件手続法第99条の公示催告の申立てができる、と定めています。管轄は、権利の目的物の所在地または登記をすべき地を管轄する簡易裁判所です(非訟事件手続法第100条)。裁判所は申立てに理由があると認めると、権利の届出の終期を定めて公示催告をし(第101条)、その内容を裁判所の掲示場に掲示し官報に掲載します(第102条第1項)。官報掲載から届出の終期までの期間は2か月を下ってはなりません(第103条)。終期までに適法な届出も争う旨の申述も無ければ、裁判所は除権決定をし(第106条第1項)、除権決定があれば登記権利者は単独で抹消を申請できます(不動産登記法第70条第3項)。添付するのは除権決定があったことを証する情報です(不動産登記令別表二十六の項添付情報欄ロ)。この道は、弁済期から20年たっていない場合や、供託額が大きすぎる場合の受け皿です。ただし法務省の部会資料は、除権決定には既判力が生じないことなどから、実務ではこの手続よりも、所在不明の登記義務者を被告として抹消登記手続請求の訴えを起こし、公示送達の申立てをして勝訴判決を得る方法が選ばれることの方が多いとも指摘されている、と書いています。もう一つ、2023年に新設された第70条第2項——規則第152条の2の調査を尽くせば所在が知れないものとみなす規定——は、地上権・永小作権・質権・賃借権・採石権の登記で存続期間が満了しているものと、買戻しの特約の登記で買戻しの期間が満了しているものだけが対象で、抵当権には及びません。抵当権者が個人で所在不明の場合の「所在が知れない」は、裁判所で公示送達の要件に準じて認定されるのが一般的で、不在住証明書・不在籍証明書、転居先不明で還付された登記簿上の住所宛ての郵便物、調査報告書等の提出が必要になると考えられる、というのが部会資料の説明です。なお、買戻しの特約の登記は、契約の日から10年を経過していれば公示催告を経ずに買主が単独で抹消を申請できます(第69条の2。民法第580条第1項により買戻しの期間は10年を超えられないため。登記原因証明情報の提供は不要)。
当社は、裁判所の手続を代理する立場にありません。当社にできるのは、その抵当権がどの道に当てはまるかの仕分けと、登記事項証明書・閉鎖登記簿の取得までです。訴訟か公示催告か、時効の援用が使えるかは、弁護士・司法書士の判断になります。査定の段階では、抹消に裁判所の手続が要る場合の期間(官報掲載から2か月以上)を見込んだ引き渡し時期をお示しします。
根拠:不動産登記法第69条の2、第70条第1項〜第3項/不動産登記令別表二十六の項添付情報欄ロ/非訟事件手続法第99条〜第103条、第106条第1項/民法第580条第1項/法務省 民法・不動産登記法部会資料12/法務省民二第538号通達
再建築不可では、担保の登記は「売れない理由」ではなく「抹消の費用と時間」の問題です
買主が住宅ローンを使う取引では、融資する金融機関が自分の抵当権を第一順位で付けることを求めるのが通常で、古い抵当権が残ったままでは決済に進めません。ここが、再建築不可の物件では少し違います。売れない理由の記事に書いたとおり、再建築不可の物件は住宅ローンの多くが融資対象外で、買主は現金で買う方か、当社のような買取業者が中心です。所有権は当事者の意思表示だけで移りますから(民法第176条)、担保の登記が残っていても売買自体はできます。そして買った側には、買った側の道があります。第一に、2020年4月1日施行の民法第145条は、消滅時効の援用ができる当事者に「保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者」を含むと明文で定めました。買主(第三取得者)は、被担保債権の時効を援用できます。第二に、供託は第三者にもできます。法務省の記載例(11)は、抵当権の目的物を買った人の相続人が「第三者として供託する」形を載せています。第三に、民法第379条の抵当権消滅請求は、第三取得者が代価または特に指定した金額を提供して抵当権を消す制度ですが、登記をした各債権者に書面を送付しなければならず(第383条)、相手の所在が分からなければ使えません。まとめると、再建築不可の家に残った古い抵当権は、「売れない理由」ではなく、売主が先に消してから引き渡すか、買主が引き取って消すかの違いと、その費用と時間の問題に変わります。一つ補足します。抵当権が付いているのが建物だけなら、建物が無くなれば登記も抹消の対象になります(建物の滅失の登記は不動産登記法第57条により滅失の日から1か月以内)。しかし民法第137条第2号は、債務者が担保を滅失させたときは期限の利益を主張できないと定めています。債務が本当に残っているなら、取り壊しで担保を消すことは別の問題を生みます。「壊せば消える」という話ではありません。
当社の見積は、二つに分けてお出しします。①売主側で抹消を済ませてから引き渡す場合の価格。②担保の登記が残ったまま引き渡し、当社が第三者として供託や手続を引き取る場合の価格(その場合は、供託額・司法書士への費用・手続の期間を差し引きます)。どちらが手取りで有利かは、供託額と、相手を探すのにかかる手間で変わります。差し引く内訳は隠しません。
根拠:民法第137条第2号、第145条、第176条、第379条、第383条/不動産登記法第57条/法務省 供託書等の記載例(11)(第三者による供託)
元金一万円の抵当権は、
四万九千六百五十一円の供託で消えます。
見出しの数字は法務省の記載例そのままです。以下は、条文と法務省民事局の 公開情報に載っている手続と数字だけを2026年9月19日に確認して 並べたものです。当社が推計した数字、司法書士費用の目安、手続に実際に かかる日数は含めていません。
登記事項証明書と閉鎖登記簿の取得
最初に。乙区の受付年月日・債権額・利率・弁済期・相手を確かめます
不動産登記法第83条・第88条/法務省 部会資料12(弁済期の判定)
登記事項証明書は誰でも法務局で取得できます。昭和39年改正前の登記で弁済期が省略されているときは、閉鎖登記簿の謄本を取ります。相手が法人なら、商業登記の登記事項証明書と閉鎖登記簿で、合併・解散・清算人を追います。
補足:ここまでは当社が査定の一部として行います。相続人の戸籍調査は司法書士・弁護士の領域です。
相手(承継法人・相続人)の調査と共同申請
相手が見つかれば、この道が最も早い
不動産登記法第60条/不動産登記規則第152条の2
自然人は住民票・除票・戸籍・戸籍の附票で相続人まで追い、法人は登記事項証明書で承継法人・清算人を追い、登記簿上の住所へ書留等で書面を送る、というのが規則の定める調査の型です。相手が協力すれば、抹消登記は共同申請でできます。
補足:登録免許税は登記の抹消について不動産1個につき1,000円(登録免許税法別表第一・一(十五))。承継した金融機関がある場合は、抹消書類の交付・再交付を求めます。
弁済期から20年:供託による単独抹消
弁済期から20年経過+元本・利息・遅延損害金の全額を供託
不動産登記法第70条第4項後段/法務省 供託Q&A Q29・記載例(10)(11)
債務履行地の供託所(民法第495条第1項。定めが無ければ債権者の住所=第484条第1項。登記簿上の住所が分からなければ債務者の住所地の最寄りの供託所)に供託し、供託書正本を添えて単独で抹消を申請します。第三者も供託できます。
補足:法務省の記載例では、元金1万円・利息年6分・弁済期昭和34年7月1日の抵当権について、令和2年7月1日の供託額は合計49,651円です。利率の定めが無ければ法定利率(2020年3月31日以前に生じた分は改正前の年5%、商行為は年6%)。
解散した法人:30年経過による供託なしの単独抹消
弁済期から30年+法人の解散から30年+規則の調査で清算人の所在不明
不動産登記法第70条の2/法務省民二第538号通達
添付するのは、被担保債権の弁済期を証する情報(契約証書・弁済猶予証書・閉鎖登記簿謄本等)、法人の解散の日を証する情報(登記事項証明書等)、調査報告書(収集した書類と郵便記録等を添付)。登記原因は「不動産登記法第70条の2の規定による抹消」で日付は不要です。
補足:2023年4月1日以後の申請に適用。清算人が死亡していれば「所在が判明しない」に当たる、住民票の除票が廃棄されていれば不在住証明書等で足りる、と通達が定めています。
裁判所:公示催告と除権決定
官報掲載から届出の終期まで2か月以上。管轄は簡易裁判所
不動産登記法第70条第1項・第3項/非訟事件手続法第99条〜第103条、第106条
不動産の所在地または登記所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示場と官報で公示催告をし、届出も争う申述も無ければ除権決定。除権決定があったことを証する情報を添えて単独で抹消を申請します。
補足:法務省の部会資料は、実務では所在不明の相手を被告とする抹消登記手続請求の訴え(公示送達)が選ばれることの方が多いとも指摘されている、と書いています。どちらにするかは弁護士・司法書士の判断です。
買戻しの特約・存続期間の満了した地上権等
買戻しは契約の日から10年で、買主が単独で抹消
不動産登記法第69条の2、第70条第2項/民法第580条第1項
買戻しの特約の登記は、契約の日から10年を経過していれば公示催告を経ずに登記権利者が単独で抹消を申請でき、登記原因証明情報も不要です。存続期間の満了した地上権・賃借権等の登記は、規則第152条の2の調査で所在が判明しなければ所在不明とみなされ、公示催告の道に進めます。
補足:古い借地で賃借権が登記されたままの場合に関わります。いずれも2023年4月1日施行。
供託の道と、解散した法人の道は、別々の根拠規定です。弁済期から20年を 過ぎていれば供託して抹消でき、さらに30年を過ぎていて相手が解散した法人 なら供託をせずに抹消できる、と法務省の部会資料は二つを並べて整理して います。どちらの道でも最初に要るのは、登記事項証明書と閉鎖登記簿で 「弁済期」と「相手」を確かめることです。そこまでは当社が行います。
消えてから売るか、
残したまま売るか。両方の値段を出します。
古い抵当権の抹消は、相手が誰で、いつの登記で、いくらの債権かで、 道と費用が変わります。当社は、その仕分けと登記資料の取得を査定の一部として 行い、抹消を済ませてから引き渡す場合と、担保の登記が残ったまま当社が 引き取る場合の価格を分けてお出しします。結果として当社にお売りに ならなくても構いません。
抵当権者の欄が、今も存在する銀行や機構の前身になっている
合併や名称変更で引き継がれていれば、承継した機関が登記義務者です。その機関に抹消書類の交付を求めるのが本筋で、旧住宅金融公庫の抵当権であれば住宅金融支援機構に再交付を申請できる、と機構が案内しています。当社は、法人の登記事項証明書で承継の経緯をたどり、「どこに何を頼めばよいか」まで整理してお渡しします。この場合、抹消の手間は比較的小さく、査定額からの差し引きも小さくなります。
抵当権者は個人名で、住所も昔のまま。もう亡くなっているらしい
相続人が登記義務者になります。戸籍で相続人を追い、見つかって協力が得られれば共同申請、見つからなければ、弁済期から20年を過ぎていれば供託による単独抹消(第70条第4項後段)、そうでなければ裁判所の公示催告か訴訟、という順番です。相続人の調査は司法書士・弁護士の領域で、当社は登記の取得と整理まで行います。供託額は登記の数字から見当が付きますので、査定の段階でお伝えします。
抵当権者は「株式会社○○」で、商業登記を調べても出てこない
解散した法人の抵当権として、2023年4月1日施行の第70条の2が想定している場面です。弁済期から30年、解散から30年を過ぎていて、規則の定める調査で清算人の所在が判明しなければ、供託なしで単独抹消できます。閉鎖登記簿すら残っていない場合の扱いも含め、調査報告書の作成は司法書士へ。当社は法人登記の取得と、弁済期の見当(登記簿・閉鎖登記簿の記載)まで整理します。
債権額が大きく、利率も高い。平成に入ってからの抵当権
供託の道は、20年分以上の遅延損害金を足した全額を預ける必要があるため、債権額が大きいと現実的ではありません。相手を探して共同申請するか、被担保債権の時効を援用するか、訴訟で抹消を求めるか——弁護士の判断が要る領域です。当社は、その判断に必要な登記の資料を揃え、抹消の見通しが立つ前の段階でも、担保の登記が残ったままの価格と、抹消後の価格を分けてお示しします。
抵当権ではなく、古い仮登記や買戻しの特約、賃借権が乙区・甲区に残っている
買戻しの特約は契約の日から10年で買主が単独抹消(第69条の2)。存続期間の満了した地上権・賃借権等は、規則の調査で所在不明とみなして公示催告へ(第70条第2項)。仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請でき、その承諾があれば登記上の利害関係人も申請できます(第110条)。どれに当たるかで道が変わりますので、まず登記事項証明書の全部事項を当社で確認し、種類ごとに仕分けしてお渡しします。
再建築不可という制度そのものの説明、査定で見ている五つの点、買取までの流れは再建築不可物件の買取ページに、前の道が建築基準法上の道路に当たるかどうかは未接道の土地・建物の買取ページに、竿の部分の幅と長さの見方は旗竿地(路地状敷地)の買取ページにまとめています。
登記事項証明書の取り方と、役所の書類で前の道を確かめる手順は調べ方の記事に、そもそも建物が登記されていないときの順番は未登記の記事に、相続が起きたあとの手続は相続の記事に、名義がきょうだいの共有になっている場合は共有の記事に、名義のご本人がご自分で判断できなくなっているときは成年後見の記事に、土地が借地で地主の承諾が要るときは借地の記事に、抵当権を消さずに売ったときに権利の不適合として責任を問われるのかは売ったあとの責任の記事に、登記簿の乙区に地役権が載っている、または私道の通行・掘削の承諾が無いときの決まりは私道の通行・掘削の記事に、借りている人や親族が住んだまま売るときの決まりは住んだまま売る記事に、抵当権の抹消のあとに壊すかどうかを決めるときの条文と解体の手続は解体して更地にするかの記事に、相続人の一人と連絡が取れないときの居場所の辿り方と家庭裁判所・地方裁判所の手続は相続人と連絡が取れないときの記事に、がけや古い擁壁に接する家の建て替えの条件(東京都のがけ条例)と区の助成はがけ・擁壁の記事にまとめています。
住宅ローンが原則使えない理由は売れない理由の記事に、敷地の輪郭を確定させる話は境界と越境の記事に、直せる範囲の線引きはリフォームの記事に、持っているあいだの税は固定資産税の記事に、売ったときの税は売ったときの税金の記事にまとめています。
手続を待つあいだ貸すという案は貸したほうがいいのかの記事に、決めずに置いておいた場合に進むことは空き家の放置の記事に、取り壊して国に引き取ってもらう道は国庫帰属の記事にまとめています(担保権が設定されている土地は国庫帰属の申請ができないため、 その前に抹消が要ります)。
区ごとの建て替えの許可制度と窓口は、足立区・葛飾区・北区・板橋区・荒川区・墨田区のページにまとめています。担保の登記が残っていても、建て替えの可否は 道路と接道の側の事情で決まります。
古い抵当権が残った家の売却についての Q&A
買取のご相談の中で、実際によくいただくご質問をまとめました。 いずれも制度の一般的な説明です。個別の抵当権の効力・時効の成否・ 所在不明の認定は、司法書士・弁護士・法務局へご確認ください。
このページについて
- 作成・運営
- 株式会社First Realty
- 代表者
- 代表取締役 野口 勇
- 宅地建物取引士
- 野口 勇(登録番号 第261304583号)
- 免許
- 宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
- 所在地
- 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-1-3 アミーホール5F
- 電話
- 03-6821-4617(10:00 – 19:00/定休 火曜・水曜)
- 加盟団体
- 公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会/公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会
- 参照した手続の案内
- 法務省民事局「供託Q&A」(Q29)・「供託書等の記載例」(休眠担保権(10)(11))・ 法務省民二第538号通達(令和5年3月28日)
- 条文・手続・窓口の確認日
- 2026年9月19日
- 最終更新
このページが参照した公開情報
本文の条番号は、以下の公開情報を2026年9月19日に確認して記載して います。民法と商法は、2020年4月1日施行の改正で法定利率と消滅時効の規定が 変わっているため、改正前(2020年3月31日時点)の条文も取得して、古い債権に 適用される利率と経過措置を確かめました。弁済期の判定方法と、改正前の法人の 「所在不明」の解釈は、法務省の法制審議会部会資料が紹介する登記実務の取扱い によるもので、法務局ごとに運用が異なることがあります。制度・様式・窓口は 更新されますので、お確かめのうえご利用ください。このページは制度の一般的な 説明であり、個別の抵当権の効力・時効の成否・所在不明の認定を判定するものでは ありません。司法書士・弁護士の費用と、手続に実際にかかる日数は、当社が 実測していないため記載していません。
- 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)|e-Gov法令検索
- 不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)|e-Gov法令検索
- 不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)|e-Gov法令検索
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-Gov法令検索
- 非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)|e-Gov法令検索
- 商法(明治三十二年法律第四十八号)2020年3月31日時点の条文(第514条・第522条)|e-Gov法令検索
- 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)|e-Gov法令検索
- 供託Q&A(Q29 休眠担保権抹消のための供託について)|法務省民事局
- 供託書等の記載例|法務省民事局
- 記載例(10) 休眠担保権の登記を抹消するための供託(担保権者の所在不明)|法務省(PDF)
- 記載例(11) 休眠担保権の登記を抹消するための供託(第三者による供託)|法務省(PDF)
- 令和8年4月1日以降の法定利率について|法務省
- 遅延損害金計算ソフトウェアのダウンロードについて|法務省
- 民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)法務省民二第538号通達|法務省(PDF)
- 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要(形骸化した登記の抹消手続の簡略化)|法務省(PDF)
- 民法・不動産登記法部会資料12 不動産登記制度の見直し(3)|法務省(PDF)
- 融資金完済時にお渡しした抵当権抹消に必要な書類がお手元にない方|住宅金融支援機構
当社は不動産の買取業者であり、登記申請を代理する立場にも、供託や裁判所の 手続を代理する立場にもありません。登記と供託の手続は司法書士へ、訴訟と 時効の援用は弁護士へ、供託所の管轄と供託額は法務局へ、建て替えの可否は 建築士とお住まいの区の建築課へ、相続税・譲渡所得の取扱いは税理士または 所轄の税務署へご確認ください。当社にできるのは、現況のままの買取価格を お出しすることと、査定の過程で調べた登記・閉鎖登記簿・道路・接道の資料を お渡しすることです。その資料は、司法書士や弁護士とお話しになるときに、 そのままお使いいただけます。
抵当権が残ったままの段階で、ご相談ください
登記と閉鎖登記簿を取得し、相手・弁済期・道の仕分けを資料にしてお渡しします。担当者より1営業日以内にご連絡いたします。査定・ご相談は完全無料です。
消えていなくても、
査定はお受けできます。
相手が分からなくても、完済の書類が無くてもご相談いただけます。 抹消してから売る場合と、残したまま売る場合の価格を分けて先にお示しします。 査定は完全無料、秘密厳守です。
宅地建物取引業 東京都知事免許(1)第113689号
